遺言についての業務のご説明
1 まず、お電話で、法律相談の予約をおとりください。
当事務所の電話対応時間は、平日9時30分から17時30分までです。
電話番号は 047―376-6556 です。
基本的には、ご来所いただいての法律相談になります。ただし、ご身体の都合などで、ご来所が困難な場合には、出張による法律相談も承っております(その場合は法律相談料のほかに、出張費が必要です)。
法律相談は1時間で、料金は11,000円(消費税込み)で設定しております。基本的には延長等はいたしません。
法律相談の時間が限られておりますので、相談時間を効率よく利用していただくため、概略を事前にお伝えいただくよう、お願いしております(ご自分の希望の概要や不安なことなどをまとめたものを送付していただきます)。そこから必要に応じて、相談の際に相談内容に応じた資料をお渡しすることなどもしております。
2 法律相談では、ご相談者の希望を聴き取り、弁護士から法的なアドバイスをさせていただき、その上で今後の方向性について協議することになります。
法律相談では、ご相談者の法律的質問に回答するのみであり、書面の検討や作成はいたしません。
法律相談の結果、遺言書の作成をご希望でしたら、改めて、遺言書の作成(への関与)の依頼が必要になります。
ただし、緊急事態での遺言等で、法律相談をしてから遺言作成のご依頼という手続きを踏む余裕がない場合には、ご相談ください。
3 遺言書作成業務のご依頼
基本料金として、1通11万円(消費税込み)になります。
ただし、複雑な案件の場合には超過料金がかかりますが、上限は33万円(消費税込み)です。
ただし、実費は別途請求させていただきます。
主な実費としては、公正証書遺言を作成する場合の手数料などです。
4 遺言関連分野について
当事務所では、遺言の作成のみならず、関連の相談も受けております。
作成した遺言のお預かりもしております(年間保管料をいただきます)。
法律制度を利用して、ご自身の意思を実現なさりたい方のための、任意後見制度のご利用や、事業承継の対応などにも取り組んでおります。
また、既に相続が発生している場合の遺産分割事件のご相談等も受けております。
遺言でできること
1. 財産の渡し方
当事務所への遺言の法律相談には、誰かに自分の財産を渡したくない、誰かに多く渡したいなどという希望が多いようです。なお、事業承継についての頁も近日中に作成予定です。当事務所でのノウハウに加え、2008年10月施行の「経営承継円滑化法」の要点の解説をする予定です。
(1)贈与(死ぬ前に、あげたい)
まず、誰かに財産を渡したいという場合、最も分かりやすく、確実なのは、贈与です。
しかし、贈与の場合には、高率の税金が課されます。1年間に110万円までは、受け取った人1人あたり、基礎控除として税金がかかりませんが、それを超えると最低で10%、最高で55%(3000万円超の場合)の贈与税がかかります。
相続税の場合は、基礎控除額が、3000万円+法定相続人の人数×600万円となっており、また、税率も3億円を超えなければ50%にならないのと比べると、贈与税は、高率ということになります。
このような贈与税と相続税の不均衡を修正する制度として、2003年から「相続時精算課税制度」が設立されました。詳しくは、財務省による相続時精算課税制度の説明 をご覧ください。この制度を利用して、生きているうちに財産の贈与を済ませる人も増えています。
(2)死因贈与契約(死んだら、あげたい)
生きているうちに贈与によって財産を渡すのではなく、死亡によって効力が生ずる贈与を「死因贈与」といいます。贈与は契約ですので死因贈与も渡す側ともらう側の契約によってしなければなりません。この点が単独の行為でできる遺言による処分(遺贈等)とは異なります。死因贈与は贈与ですが、税金は相続税が課されます。不動産の死因贈与の場合、仮登記をすることができるので、もらう側は安心できます。一度契約した、死因贈与の取り消し(法律上は「撤回」)については、特に負担付死因贈与契約を締結して、もらう側が負担を履行している場合には制限されるとされています。ちなみに死因贈与契約は、弁護士など代理人によって締結することもできます。
(3)推定相続人の廃除 (その人には、あげたくない)
推定相続人(つまりそのまま放置しておけば将来相続人になる人)が、虐待、重大な侮辱、著しい非行があった場合には、家庭裁判所に請求して、その(推定)相続人を廃除できます。この廃除は遺言に記載する方法によってもすることができます。
ただし、この「廃除」について、申立をすれば簡単に認められるわけではありません。裁判所の廃除が審判でも認められた例、認められなかった例が多数判例集に記載されています。詳しくは弁護士に相談するか、判例等を分析することになりますが、要するに相続人としての権利を剥奪するほど、重大な問題がその推定相続人にあったと、「客観的」に認められるかどうかが判断の分かれ目になります。
(4)遺留分の放棄(相続人に権利主張をさせない)
相続が始まってからであれば、法定相続人は相続放棄をすることができますが、被相続人が生きている間には相続放棄をしてもらうことはできませんし、死後相続放棄をしてもらうことを約束しても効果がありません。
生きているうちにできることとしては、「遺留分の放棄」があります。遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に対して留保された相続財産の割合のことです。遺留分を生前に放棄してもらうには、家庭裁判所での許可の審判を経る必要があります。この放棄の手続きによって、兄弟姉妹(とその子)以外の相続人も、相続が発生しても遺留分の(減殺)請求権を主張できなくなります。なお、兄弟姉妹(とその子)はもともと遺留分はありませんので、遺言で、その人に渡さないことにしておけば、これ以上対策は必要ありません。
2. 遺言など
(1)遺言でできること
認知、後見人の指定、推定相続人の廃除(とその取り消し)、相続分の指定(とその委託)、特別受益の持ち戻しの免除、遺産分割方法の指定(とその委託)、遺産分割の禁止、相続人間の担保責任の指定、遺留分減殺方法の指定、遺贈、一般財団法人の設立、信託の設定、遺言執行者の指定(とその委託)、祭祀承継者の指定、遺言の撤回、生命保険金の受取人の指定・変更
(2)遺言の方式
遺言は、死後に効果が発生するものであり、効果が発生するときには、作成者の真意を直接尋ねて確認することができません。そのため法律では、「遺言の方式」を厳しく定め、これに違反した遺言は効果がない(無効)としています。
通常の場合に作成する遺言(普通方式の遺言)には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類あります。
①自筆証書遺言 自筆で全文、日付、氏名を記載して、押印するものです。日付の書き忘れによる無効事例がかなりあります。加除訂正の方法が複雑ですので、訂正方法がわからなければ書きなおすことをお勧めします。無効な遺言も死因贈与として救済される可能性もあります。
②公正証書遺言 公証人が作成する遺言です。弁護士を通じて、公正証書遺言の原稿をやり取りして、依頼者の意向や希望に沿った公正証書遺言を作成することは実務ではよく行われています。公証役場に出向いて作成してもらうのが原則ですが、出張費等を支払うことによって、病院等に公証人が出張して、公正証書遺言を作成することもできます。
③秘密証書遺言 秘密証書遺言は、内容を秘密にすることができる遺言です。
新しい保管制度ができました。詳しくは法務省「自筆証書遺言書保管制度」をご覧ください。
(3)その他の遺言についてのポイント
①遺言能力
15歳以上であれば、意思能力があれば、誰でも、上記の方式に従って遺言を書くことができます。成年後見がされている人も、いわゆる「事理弁識能力」が回復し、医師2人の立会いがあれば、遺言をすることができます。
理論上は、遺言作成時に意思能力があれば足りるのですが、実務では、遺言作成当時、意思能力があったのかどうか、激しく争われることが多いです。
②内容の無効
遺言の形式的部分が適法であっても、遺言内容が公序良俗に違反しているとして、無効にされてしまうこともあります。実務上、この点で問題になることが多いのが、いわゆる不倫関係の相手への遺贈です。裁判例は分かれていて、戸籍上の関係と、戸籍外での人間関係の実質的な強さ、双方の関係への影響などを総合的に判断して決めているようです。
3. 詳しく知りたい方のために
アライズ総合法律事務所は、『女の遺言 わたしの人生を書く』(麻鳥澄江・鈴木ふみ著、御茶の水書房)の作成・協力をしています。この本では、遺言についての法律の解説や記載例の紹介だけでなく、遺言でどのようなことをしようか決まっていない人のためのさまざまな材料を提供しています。
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